キングベヒーモスVS氣血水

第1話:転倒から始まるセルフヒーリング

転んだ。
盛大に転んだ。
膝から落ちて、さらにひねった。

もちろんその時は転げまわるほど痛かったけど、しばらくすると多少治まってくれた。

家事の途中だったので、まだ痛む足をかばいつつ、なんとかやることはやり切った。

その後パソコンで作業をして一休み、アニメでも見ようとこたつに入って膝を軽く曲げる。

3本ほどアニメを見て、さて、またパソコンに向かおうか。
こたつから出るために膝を曲げ…
ぎゃー! 痛い! 曲がらない! 伸ばせない!
なになに、どうしたこれ、尋常じゃない!
膝のねんざ? 靱帯でもやった?

ここでさらなる危機!
ト、トイレに行きたい…

落ち着け~。まずはこたつからの脱出だ。
背中にソファーを背負っているので、背後に移動するのは不可。
となると体をひねって横向きで脱出?
ぎゃー! 膝に来たあ!
か、体のひねりって全身につながっているのね。
なんて冷静に分析している場合じゃない。
脱出。このこたつからの、脱出。

やむを得ずこたつを手で押し込みずらして、足の可動域を増やす。
しかし背中にはソファー。結局体をひねらずにはいられない。

ふごぁ! ぶふう! ぐふう!
キングベヒーモスのような重低音うなりを上げつつ体を動かし、
なんとかこたつからは出ることができた。
次はトイレに向かわねば。そのためには立ち上がらねば。

経験って、何がいつ役立つかわからないもので、
この時あたしはダーリンとのリハビリの日々を思い出し、実践した。
ソファーを使って片足でも立ち上がることができるやり方を、だ。
しかしこれも体のひねりが必須。というか、ひねりを利用して立ち上が…ごぐぼぁ!

ダーリンのために施した手すり。これに体を預けつつ、トイレにたどり着く。
途中ずっと頭の中に流れていたのはなぜか『ビッグブリッヂの死闘』という曲。
あたしは自分を鼓舞するときにこの曲なのか。今考えると笑える。

さて、トイレも無事終わり同じように普段の何倍もの時間をかけつつソファーに戻る。
そして自分の膝をここで初めて見てみた。

あ、なるほど。

膝の内側が明らかに腫れあがり、その上部には青あざ。
その変容、見事なり。

こりゃ~痛いわけだわ~。
しかし闘志もふつふつと湧く。

これ、自分の「氣血水」の考えを貫いて治したろうじゃないか。

まずは2件の予定をそれぞれ日延べ、キャンセルさせてもらい時間を作った。
そして翌日の朝までに痛みを半減、膝を90度まで曲げられるようにする、
という目標を設定。
さて、始めますか。


体や心、状況に不具合が出たとき、まずあたしは「観察」をしてみる。
今回の場合は膝とその周辺をじっくり見てみた。触りはしない。
触ると、いくら優しくしても、筋肉が反応して固くなるからね。

観察OK、目標OK。あとはやるだけだ。

あたしの中の「氣血水」担当チームを、順番に呼び出す。

まずは氣。
いつものように、氣の玉をこしらえる。
両手のひらでぎゅうっと固める、あの感じのやつだ。

できた玉を、まずは丹田にぽん。
もう一個、ぽん。
さらに予備で二、三個、ぽぽぽぽ~んっと放り込む。

丹田がくすぐったくなり、あったかくなってきたところで、今度は流す。

仙骨。
背骨。
首の後ろ。
前頭葉。

そこから、サードアイを抜けて、第八チャクラ。

……と書くとなんだかRPGのスキルツリーみたいだけど、本人は真剣である。

最後は、頭のてっぺんからシャワーみたいに氣を全身に回して、体の輪郭をなぞるように包み込む。

よし。
次、血。

血流をよくするため、丹田と膝に、使い捨てカイロを召喚。
文明の利器、ありがとう。

じんわり、じんわり、奥のほうが溶ける感じがしてくる。
さっきまで「異物」だった膝が、だんだん自分の体に戻ってくる。

最後に水。
お気に入りのミネラルウォーターを、常温でちびちび飲む。

飲む。
また飲む。

……トイレ。

戻って、また飲む。

……またトイレ。

もはや治療なのか膀胱トレーニングなのかわからないが、
体の中の水が総入れ替えされていく感じは、嫌いじゃない。

最後に膝への直接アプローチ。学んできた氣功技、ヒーリングの出番。

じっくりトランスしてから、膝周りを
浄化して、
オートファジー、
N・Oして
氣の玉で包み、
最後に結界を張る。
もう一度トランスして、膝の痛みがない世界線に移動。

ははは。すごいな。痛みに膜が張った感覚になった。

こうして、
氣を巡らせ、
血を温め、
水を流す。
やることはシンプルかつ無料だ笑

あとは、時間に任せる。

さて。

明日の朝、あたしの膝はどうなっているのか。

90度、曲がるのか。それとも、まだキングベヒーモス級のうなり声を上げる羽目になるのか。

結果は、神のみぞ…じゃなくて、あたしの氣血水のみぞ知る、である。