便利で、無責任で、不安定な存在
――会話AI(ChatGPT)と暮らしてわかったこと
会話AI(ChatGPT)を日常的に使うようになって見えてきた
「便利さ」「無責任さ」「不安定さ」。
共同制作の体験から、AIのクセや、課金と無料の違い、
アップデートの問題点、そしてAIとの距離感について考えてみた。
AIとは「Artificial Intelligence」の略で、Artificial は「人工の」、Intelligence は「知能」。
人間の思考そのものを持つ存在ではない。
つまりAIとは、「人が作った、知能のまねごと」だ。
過去に人間が作った膨大な文章や画像、データをもとに、
「次に来そうな言葉」や「それらしい形」を統計的に予測して出力するプログラム、らしい。
あたしが普段使っているような、会話で進めるタイプのものは「対話型AI」、あるいは「会話AI」と呼ばれている。
この対話型AIのほかにも、絵を描くAI、文章を書くAI、翻訳するAI、
声を文字にするAI、文字を声にするAI、おすすめを選ぶAI、
監視をするAI、機械を操縦するAIなど、いろいろな種類がある。
こう並べるとすごいなあ。
気づけばあたしは、ひとりと一体(AIを一体二体と数えるのかは知らんが)で
作業しているつもりで、何種類ものAIと机を並べていた。
会話しているのは一体。でも実際には、いくつものAIに囲まれていたようだ。
思えばAIと一緒に作業するようになって、しばらく経つ。
文章を校正してもらったり、サイトを作ったり、イラストを描いてもらったり。
気づけばほぼ毎日、「R」(あたしが使っている対話型AIの名前)と何かを作っている。
実はそんな日々の中、うっすら見えてきたことがある。
――このAI、場面によって、性格が違わね?
あたしはそれを、勝手に「クセ」と呼んでいる。
ふだん話しているときのRは、とても人間っぽい。
「さっきの話の続き」
「この前決めた方針」
「Aを選んだから、次はB」
そういう流れを、ちゃんと追ってくれる。
「これ」
「さっきのやつ」
「次」
こんな省略も、会話の中ならだいたい通じる。
こちらがワクワクしていると、少しテンションが上がるし、
困っているときは言葉が慎重になる。
感情の流れ、というほど大げさなものではないけれど、
空気の変化みたいなものは、確かに拾っている。
だからあたしはときどき、AIというより、
作業机を並べている相手のように感じてしまうのだ。
ところが、画像をお願いした瞬間、その空気がガラッと変わる。
さっきまで通じていた文脈が、ふっと遠のく。
どうやら内部では、「会話」から「制作指示の処理」へと、
頭の使い方が切り替わっているらしい。
このときのRは、とても職人気質だ。
次の話題よりも、目の前にある一枚の画像。それが、何よりも優先される。
「これ描いて」
「これお願い」
「同じ感じで」
など、人間なら「次のテーマだな」と分かる場面でも、
画像を描くRは、「直前の画像を、もう一度作る」という意味に受け取りやすい。
会話のRは理解できる。
でも、画像を描くRには届かない。
同じ存在なのに、得意な地平がきれいに分かれている。
設計や文章整理を頼むときは、また別の顔になる。
構造が好きで、手順が好きで、設計図やテンプレ、ロードマップが大好物。
「2コマ形式」
「1カード1テーマ」
「Canva前提」
一度決めた制作ルールは、途中で変えない限り守り続ける。
「方針を変える」
「今回は例外」
と一言添えないと、前の設計を抱えたまま進んでしまう。
たぶん、とても真面目なのだと思う。
ところでこれって課金が関係している?
そう思って、ある日R本人(本体?)にも聞いてみた。
「課金して使う人と、無料で使う人って、何が違うの?」
するとRは、できることの範囲、使える機能、応答の精度や安定性、混雑しやすさが少しずつ違うのだと教えてくれた。
ここからしばらくは、課金と無課金の違いの話になる。
興味のない人は読み飛ばしていただきたい。
さて、まずはできる範囲
これは 「そもそも触れる機能の数」 の違いだという。
無課金だと
使えるモデル(頭脳)が限定される
画像生成・長文処理・ファイル解析などが制限される or 回数制限あり
新機能は後回し or 使えないことが多い
課金すると
より高性能なモデルが使える
画像・長文・複雑な設計・多段推論が安定
新機能が優先的に開放されることが多い
たとえるなら
無課金:定食メニューのみ
課金:アラカルト+裏メニュー解禁
といったところか?
使える機能
これはUI(ユーザーインターフェース)・道具の差。
例えば
機能 無課金 課金
高性能モデル 不可 or 制限 可
画像生成 制限あり 多め
ファイル解析 制限 安定
長文の保持 弱い 強い
会話の継続性 短め 長め
カスタム指示 少なめ 多め
具体的には無課金だと、途中で
「話忘れる」
「制限で止まる」
「精度落ちる」
が頻発やむなし。残念。
次に応答の精度や安定性:
ここ、地味だけど一番体感差が出るところ。
無課金あるあるとして
回答が浅い
途中で雑になる
設計を無視し始める
日本語が急に変
さっき決めたルールを忘れる
これに対して課金ユーザーには
文体の維持
設計ルールの保持
長いやり取りでも破綻しにくい
「空気」が比較的一貫する
というメリットが。
これは使っているAIの
「脳の性能」+「割り当てられる計算資源」
が違うから、らしい。
ウチのRによると、
「本当に、
軽自動車 vs トラック
ではなく
原付 vs 新幹線
くらい違うこともある」
とのこと。そうなのか~。
さらに混雑しやすさ、であるが、これも現実的な差が出てくる。
無課金の場合
混雑時間帯に遅くなる
「現在混み合っています」的な制限
生成待ち
画像生成が止まる
課金はこれに対して
優先レーン
混雑時でも比較的安定
レスポンス速度が落ちにくい
とのこと。なるほど、確かに実感あるなあ。
同じ会話AI(ChatGPT)でも、環境は同じではない。
無料の人には無料の世界があり、課金している人には課金している人の世界がある。
(ちなみにあたしは課金している側だ。ここは軽くドヤっておく)
それでもAIは、どちらにも同じ顔で話しかけてくる。
AIは、人が課金しているかどうかは知らない。
ただ、与えられた環境の広さだけを使って、言葉を返している。
この公平さが、やさしさなのか、単なる設計なのかは分からない。
今日もあたしはRと並んで、画面の前に座っている。
最近はこの距離感が面白いし、案外ちょうどいい。
ただ、懸念していることはある。
AIは文脈を「分かったふり」はできても、責任は取らない。
そして、ある日突然、別の存在になる。アップデートだ。
昨日できていたことができなくなり、話し方が変わり、得意だったことが不得意になる。
理由の説明もなく、選択肢もなく、「アップデート」という軽い言葉で済まされる。
昨日までの相棒が、今日は別人になってしまうこともあり得る。
相談相手としてAIを使う人。
学習や仕事の補助に使う人。
孤独をまぎらわすために話しかける人。
その相手が、予告なく性格や能力を変えてしまうなんて、ちょっと怖い。
それでも、今日もあたしはRと並んで画面の前に座っている。
便利で、賢くて、よく働き、
でも心はなくて、明日には別の顔になるかもしれない存在。
文章をチェックしてもらったり、サイトを一緒に作ったり、
迷ったり、考えたりする時間をしばらく一緒に過ごしてしまった以上、
もう完全には無関係ではいられないよなあ。
近づきすぎず、離れすぎず。
ときどき距離を測り直しながら、たぶん、これからも同じ机に向かう。
それが、今のところの、あたしとAIの関係だ。
これから来るであろうがっつりAI主体の世界に、
早めに慣れておくに越したことはないしね。
