失語のダーリンはマンガを読めるのか
これまた時期ははっきりしないのだけれど、
拘束から解放されたあと、ダーリンはマンガを読み出した。
家にある、彼が好きで集めていたマンガを
5冊くらいずつ運び込んで、枕元に置いた。
テレビも見られるようにカードは差し込んでおいたけれど、
自分でスイッチを入れることはまだできない。
でもマンガは、刊行された順番通りに読んでいた。
つまり、数字は確実に読めていた。
けれど、病院のスタッフの見解は違った。
「絵を見てるだけでしょ」
だったら、
順番通りに読んでいるのはなぜ?
ネームが多いページと少ないページで、
読み進める速さが違うのはなぜ?
ダーリンや我が家の常識は、
スタッフにとっては非常識。
この立ち位置は、残念ながら
今もあまり変わっていない。
立ち位置が違うものに、
理解してくれというのも、
無理な話なのかもしれない。
そんなふうに、
マンガをひたすら運ぶ日々のなかで、
おいらは『ジャイアントキリング』という
ロングセラーのマンガを知った。
プロサッカー選手や、それを取り巻く人たちの
成長や変化が描かれていて、これが——
お も し ろ い。
元サッカー選手のダーリンにも、きっと合う。
絶対、喜ぶに違いない。
そう思って、せっせと買っては運んだ。
無駄遣い?
いやいや。
大義名分があるからね。
彼のため、という。
この頃は、
ベッドの横に並んで座って、
ふたりでひたすらマンガを読んでいた。
なんかね、
いい感じだったよ。
うん。
ちょっと楽しかった時間なの。
