やる気より、15度のズレ

ここ一週間ほど、ちょっと珍しい状態になっていた。

メールチェックも面倒。
サイト更新もしたくない。
ブログも書きたくない。

やることはある。
むしろ、ありすぎるほどに、ある。

なのに身体が動かない。
気持ちが向かない。

こういうとき、人は理由を探したくなる。

疲れているのかな。
気圧かな。
年齢かな。
何か嫌なことがあったかな。

私も最初は探した。
でも途中で思った。

「ああ、これ、理由がわかったところで動くようになるわけじゃないな」

経験上、知っている。

人間は案外、原因がわかることと、
動けるようになることが一致しない。

むしろ、原因だけ増えていくこともある。

そんなとき、ふと思い出した。

そういえば、
自分で「没頭アプリ」なんてものを作っていたジャマイカ。

集中アプリではない。

集中という言葉には、
少しだけ命令の匂いがある。

がんばれ。
集中しろ。
気を散らすな。

そんな感じ。

でも没頭は少し違う。

気づいたら入っていた。
気づいたら続いていた。

そんな状態だ。

作った本人がほとんど使っていないのもどうかと思うが、
せっかくなので使ってみた。

すると不思議なことが起きた。

やる気は出なかった。
相変わらず出なかった。

ここ大事。

突然情熱が燃え上がったわけでもない。
人生が変わったわけでもない。
世界が輝き出したわけでもない。

ただ、
少しだけ景色が変わった。

ほんの少し。

体感でいうと15度くらい。

真っ直ぐ前しか見えていなかったのが、
ちょっと斜めが見えるようになった感じ。

すると、
なんとなく次が気になった。
なんとなく続けたくなった。
なんとなく書いてみたくなった。

その結果、他社向けに書いていたエッセイを
二時間ほどで一本書き上げていた。

あとで振り返って思った。

あれは、やる気が出たのではなかった。

見えている景色が変わったのだ。

人はやる気で動いているのだろうか。

それとも、見えている世界で動いているのだろうか。

もし後者なら、理由探しは案外遠回りかもしれない。

もちろん理由が必要なこともある。

でも、動けない理由を集め続けるより、
見え方を15度ずらす方が早いこともある。

椅子の向きを変える。
散歩する。
声に出して読む。
関係ない本を開く。
アプリを押してみる。

そんな程度のことで。

大きな変化ではない。

たった15度。

でも飛行機は、離陸するとき数度違うだけで
まったく別の場所へ着くらしい。

人間も案外、似たようなものなのかもしれない。

やる気が出ない日、あたしたちは理由を探し始める。

でもその前に、景色を15度だけずらしてみる。

すると案外、
「やる気が出た」ではなく、
「気づいたらやっていた」

が起きる。

人って面白いねえ。

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